避妊せずに通常の性交渉をもつカップルが、1年以内に妊娠に至る可能性は80%。以前は2年以上妊娠しない場合を不妊と定義されていましたが、最近は1年以上に変更されました。では実際に不妊治療を受ける場合、どんな流れで治療が進んでいくのでしょうか。


不妊治療ってどうなってるの?

カップルの状況と不妊の原因によって決まります

こんにちは。産婦人科医の西尾です。今回は不妊治療の流れについてお話しさせていただきます。

不妊治療はなるだけ自然に近く、痛みや身体への負担の少ないものから行っていくのが基本です。まず不妊の原因になるものがないか検査をしながら、タイミング指導を行っていきます。

それでもうまくいかない場合は人工授精。排卵誘発がスタートする人もいます。その次は体外受精、うまくいかなければ顕微授精とステップアップしていきます。

不妊治療の流れをおさらい

1.まずはいろいろな検査

Inauguración del Hospital Municipal de Chiconcuac
Inauguración del Hospital Municipal de Chiconcuac / Presidencia de la República Mexicana

不妊治療に入る前に、まず検査を行います。もちろん女性側だけでなく男性にも受けていただかなくてはいけません。

<男性側>

なにはなくとも精液検査です。精子の数、濃度、運動率、奇形率を調べます。結果次第では精巣の視触診・エコー検査、ホルモン検査、染色体検査が追加されます。

<女性側>

・基礎体温…1周期分だけでは不十分で、最低2-3周期分は必要です。排卵しているかどうか推定したり、黄体機能不全がないか確認します。

・ホルモン検査…よく検査される項目はFSH(卵胞刺激ホルモン)、LH(黄体化ホルモン)、E2(女性ホルモン)、TSH・FreeT4(甲状腺ホルモン)、プロラクチン(乳汁を作るホルモン)です。月経や排卵の異常を引き起こす原因がないか探します。

・経腟エコー、内診…子宮筋腫や子宮腺筋症、卵巣腫瘍がないかなどをみていきます。 また、おりものやクラミジアの検査も行います。

・子宮卵管造影…X線をあてて行う検査ですので月経開始から10日以内(つまり、月経が終わってすぐ)に行います。粘膜下筋腫や子宮の奇形がないか、卵管は両方ともスムーズに通っているか、卵管周囲に癒着がないかを確認します。

・ヒューナーテスト…性交渉後の朝に受診して、頸管粘液の中で精子が生きているかを検査します。頸管粘液で精子が生きていない場合は、さらに抗精子抗体を検査します。

また男性側と同様に、染色体検査を行うこともあります。これらの検査で異常があれば、必要に応じて薬や手術で治療をしていきます。

2.タイミング法

Me and Christine
Me and Christine / spcbrass

女性の年齢にもよりますが、検査と平行しながら、だいたい半年くらいタイミング法を行うのが一般的な流れです。

基礎体温やエコーで卵胞の大きさを測ったりしながら排卵日を予測し、その付近で性交渉をもってもらいます。自然な排卵が難しい場合はこの時点から排卵誘発を行います。

3.必要に応じて排卵誘発

The needle
The needle / Dr PS Sahana * Kadamtala Howrah

検査の結果、卵巣やホルモンに問題があり、自然に排卵していなければ排卵誘発を行います。ここでも身体の負担が少ないほうから行いますので、まずはクロミッドという内服薬から始めます。

それでも排卵しないようであれば、hMG-hCGといってホルモンを注射することで排卵誘発します。クロミッドで排卵される卵子は1~2個ですが、hMG-hCGでは複数個の卵子が一気に育ち、排卵されることがあります。

4.人工授精

Couple.
Couple. / young shanahan

排卵日直前から排卵日に、洗浄・濃縮したパートナーの精子を子宮内に直接注入する方法です。

パートナーの精子の数が少ない場合や、勃起不全があり性交渉が難しい場合、頸管粘液の抗精子抗体が陽性である場合、また理由ははっきりしないけれどもタイミング療法で妊娠しない場合などに行います。

自費診療ですが3万以下で行っているクリニックも多く、また「頸管粘液を人工的に突破する」以外は自然に近い方法なので、身体への負担は少ないです。

5.体外受精

Couple
Couple / lesanta

人工授精はうまくいく場合のほとんどは1~2回で妊娠しますので、5回以上行っても妊娠しないのであれば、体外受精にステップアップします。

また両方の卵管が詰まっている場合は体外受精からスタートします。ここからはいかにも不妊治療、という領域に入ります。一般的な産婦人科で行っていることは少なく、不妊治療専門のクリニックや病院がメインです。

排卵誘発剤を使用して、卵子を複数個育てます。排卵するくらいまで卵子が育ったら、経腟エコーをしながら卵巣に細くて長い針を刺し、卵子を吸い取ります。(なかなかに痛いので麻酔をして眠った状態で行います。)この間にパートナーに精子を採取してもらっておきます。

その後、清潔な器具の上で卵子に精子をふりかけ、受精させます。数日育てた受精卵のうち、よさそうなものをひとつ選んで子宮の中に細いチューブや金属の管で戻します。

費用は病院によって異なりますが、だいたい20万円以上かかります。2012年の1回の移植あたりの成功率は、全国平均で22.6%です。

6.顕微授精

Microscope stage
Microscope stage / Iqbal Osman1

体外受精でうまくいかない場合や、精子の運動率が低い・正常な形のものが少ない場合は顕微授精を行います。

体外受精は精子と卵子を自由に受精させますが、顕微授精は顕微鏡のもとで、卵子に厳選した精子をひとつ、特殊な器具で注入します。受精卵がうまく育ったら子宮の中に戻します。

女性側は体外受精のときと同様の方法で採卵をします。男性は精子に問題がなければ自然に採取してもらいますが、無精子症など問題がある場合は局所麻酔をして精巣から精子を取り出し、顕微授精を行います。

費用は1回あたり50万以上かかることが多いです。2012年の1回の移植あたりの妊娠率の全国平均は、自分で精子を採取する場合が19.0%、精巣内から精子を採取した場合が15.3%となっています。

まずは身体の負担が少ないものから

状況をみながら変えていきます

不妊治療の流れについてまとめました。ざっくりまとめると、とにかく検査をして、治療の必要があるものや手術によって妊娠率の向上が見込まれる場合は治療をします。

そしてまずタイミング法から始め、お話しした順番に徐々にステップアップしていくのが基本的な流れです。

しかし、頸管粘液に問題があれば人工授精から、卵管に問題があれば体外受精から、精子の問題が強ければ顕微授精からのスタートになります。また夫婦の年齢が高く、妊娠を急ぐ場合はタイミング法などをとばすことがあります。

不妊治療は高額なイメージがありますが、保険が使えるものもあります。また保険が使えない分野については、自治体の不妊治療助成制度がありますので調べてみてください。

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